LIP CREAMとTHRASHER
- POSSESSED SHOE.CO
- Apr 30
- 6 min read
ハードコアパンクをきっかけにスケートボードにのめり込んだ自分にとって、80年代当時のTHRASHER誌は、まさにバイブルのような存在でした。
スケートを始めたばかりの頃は、スケートボードシーンに関する情報を得る手段がほとんどなく、数ヶ月遅れでアメリカから入荷するTHRASHERを、英語も分からないまま必死に読み漁ったものです。誌面から少しでも情報を得ようと、写真や記事に食い入るように見入っていました。当時のTHRASHERは、最新のスケートボード情報だけでなく、音楽情報も非常に充実していました。特に80年代は、さまざまなジャンルがクロスオーバーしていた時代であり、THRASHERも「SKATE ROCK」を掲げ、スケーターが在籍するバンドや、スケーターに支持される音楽を積極的に特集していました。

THRASHER Feb,1987
中でも、1987年のTHRASHERは自分にとって特別な年でした。ボストンハードコアのGANG GREENが表紙を飾った2月号を見たときには、「スケート誌の表紙にハードコアバンドが!?」と衝撃を受けましたが、それ以上に驚かされたのは音楽ページに載っていた一枚の写真でした。そこには、METALLICAのメンバーと、日本のハードコアパンクバンドLIP CREAMのシンガーであるジャジャ氏、そしてベーシストのミノル氏が、見開き半ページの大きさで一緒に写っていたのです。

THRASHER Feb,1987に掲載された写真。当時ジャジャ氏と交流のあったVIOLENT GRINDのKURO氏との関係も興味深いです。
独立自由型2号 KURO氏インタビュー https://www.possessedshoe.com/about-3
当時、THRASHERの音楽ページはPUSHEAD氏が担当していました。彼とジャジャ氏に交流があることなど知る由もなく、ただただ驚くばかりでした。METALLICAは、PUSHEAD氏がグラフィックを手がけたZORLAC SKATEBOARDSからモデルを出していたため、彼らの間にスケートボードを介した関係性があることは知っていましたが、この写真を見たとき、「LIP CREAMのメンバーもスケーターなんだ!」と勝手に想像して、気分が高揚したのをを覚えています。

THRASHER May,1987
さらにその3ヶ月後の5月号では、なんと見開きでLIP CREAMのインタビューが掲載されました。自分の知る限り、日本のアーティストがTHRASHER誌で見開きインタビューを受けるのは、これが初めてだったと思います。

THRASHER May,1987 LIP CREAM Interview
LIP CREAMはすでに海外のコンピレーションにも参加しており、海外でも知られてはいましたが、THRASHER誌への登場でさらにアメリカを中心に世界に存在感を広げたのではないかと思います。PUSHEAD氏のLIP CREAMに対する鋭い着目は、さすがオリジナルハードコアバンドSEPTIC DEATHのシンガーであり、自身のPUSMORTレーベルを運営していた人物ならではだと感じます。このインタビューもPUSHEAD氏自身が取材しており、当時のLIP CREAMを知る上で非常に貴重な内容です。

THRASHER June,1987
そして翌月のTHRASHERにも、PUSHEAD氏連載ページのPUSZONEで再びLIP CREAMが登場。結果的に、1年間に3回もTHRASHER誌に登場するという、日本のハードコアパンクバンドとして、異例の快挙を達成しました。特にジャジャ氏は、すべての記事に登場しており、その存在感の大きさを改めて実感しました。

THRASHER June,1987 PUSZONE 右ページのアートワークはP.O.W誌用に描かれたアートワークとキャプションがありますが、実はある日本を代表するバンド作品のジャケットになる予定だったらしいです?!
ちなみに、1987年当時のLIP CREAMのディスコグラフィーは、5月号インタビューの後半にまとめられています。まだ聴いたことがない人は、ぜひチェックしてみてください。どの作品もハードコアでロックンロールで全て純粋に格好良いのです。ほとんどの音源は入手困難な物ですが、現在ではYouTubeでほとんどの音源が聴く事が出来ます。そして最近ではLIP CREAMが運営するDYNAMITE RECORDSが活発に活動している様なので、今後のリリースにも期待しています。

当時収集していたLIP CREAMの作品は全て手放してしまい、手元に残っているのはこの1st EPのおまけステッカーだけです。
思い出深いエピソードとして、80年代後半、豊島公会堂で行われたPUNKのライブイベントにスケーターの友人と一緒に行った際、遊びに来ていたジャジャ氏を見つけ、思わず話しかけました。スケートボードを持っていた高校生の自分たちに対して、ジャジャ氏は「お~、スケートボードやるのか?ちょっと貸してみな。このくらいの階段ならボーンレスで飛べるぜ!」と気さくに話してくれました。豊島公会堂の正面階段でそんな会話をしたのを今でも覚えています。その時、ジャジャ氏はラバーソールを履いていて、「さすがにこの靴じゃ無理だよな!」と笑っていたのも印象的でした。
自分はパンクをきっかけにスケートボードにのめり込みました。スケートを始める前は、高校生のパンクリスナーで、自主制作の作品をリリースし、ライブハウスを中心に活動するバンドに夢中でした。渋谷センター街にあった「屋根裏」や目黒の「鹿鳴館」などに、緊張しながらも足を運んでいたのを思い出します。

LIP CREAMのフライヤーは見つかりませんでしたが、高校時代によく通っていた渋谷「屋根裏」で開催されたGHOULのライブフライヤーが出てきました。出演はハードコアパンクのGHOUL、GAS、そしてヘヴィメタルのUNITEDの3バンド。HOLD UP RECORDS主催のライブだったと思われます。
当時のHOLD UPは、ハードコアとヘヴィメタルのバンドを収録したコンピレーションアルバムを制作したり、ヘヴィメタルバンドの作品もリリースしていたため、両ジャンルのバンドが共演するライブも珍しくありませんでした。
そんな中、あるテレビ番組がハードコアとヘヴィメタルの対立を強調するような内容を放送したことがありました。今のようにインターネットがなかった時代、テレビメディアの影響力は大きく、情報の受け手として疑問を持つのが難しい面もありました。しかし、こうした実際のフライヤーを見ると、そうした報道が実情とは異なるものであったことがよくわかります。
そんな中で、よくライブを観に行っていたのが、今回コラボレーションすることになったLIP CREAMでした。当時リリースされた作品はすべてレコード店で購入し、カセットテープにダビングして、テープが伸びるほど繰り返し聴いていました。高校生だった自分にとって、ハードコアのライブは常に緊張感に満ちていましたが、それでもLIP CREAMの音楽を生で聴きたくてたまりませんでした。何より、彼らのファッションが自分にとって“最先端”で、それを間近で見たいという思いも強かったのです。ノリと楽しさを併せ持ったLIP CREAMのライブに惹かれ、何度も足を運びました。
そんな彼らが、音楽・ファッションの両面で多大な影響を与えてくれ、さらにスケートボードシーンで絶対的な存在であるTHRASHER誌にも登場し、今でも自分が聴くヘビーローテーションバンドであり続けている。その存在の大きさを、改めて実感しています。そして今回、POSSESSED SHOEからLIP CREAMのシューズがリリースされるという奇跡。早くLIP CREAMのスリッポンを履いて、LIP CREAMを爆音で聴きながら、スケートボードで爆走したいと思っています。
ROCKeT Death White
LOGO Death White
ROCKeT Cowper’s yellow
LOGO Green Cream
“LIP CREAM” SKATE SLIP ON
SIZE : 26cm(8inch) ~ 29cm(11inch)
MATERIAL : CANVAS
PRICE : ¥13200-税込
2025年7月中旬発売予定
この商品は予約分だけしか生産しません。欲しい人は必ず予約をお願いします。下記URLから取り扱い店舗をご確認の上、お問い合わせをお願いします。5月18日まで予約を受け付けています。※店舗により予約締め切り日が異なるのでご注意ください。